「海外にいたのに、英語に自信が持てない」
周囲には言いにくい悩みではないでしょうか。「帰国子女なんでしょ?」と言われるたびに、本人も保護者も居心地の悪さを感じる。それでも、何から取り組めばよいのかがわからない。
先にお伝えしたいのは、海外で暮らした経験があっても、英語の得意・苦手に差があるのは不思議なことではないということです。暮らしていた地域や学校、英語を使う機会によっても、身につく力は変わります。
この記事では、困りごとを整理する目安として、次の2つのパターンを取り上げます。
- パターンA:英語で話すことや、授業を理解することに不安がある
- パターンB:日常会話はできるが、文法・読解・作文や試験でつまずく
この2つは、はっきり分かれるとは限りません。両方に当てはまる場合もあります。大切なのは、「英語ができない」とひとまとめにせず、どの場面で困っているかを確かめることです。
筆者が担当したご家庭での経験も交えながら、つまずきの見つけ方と、状況に合わせた学習方法を解説します。
「帰国子女なのに英語ができない」は2パターン|まず困りごとを整理する
最初に確認したいのは、海外にいた年数よりも、今、英語を使って何ができて、何に困っているかです。
| 確認項目 | パターンA | パターンB |
|---|---|---|
| 主な困りごと | 会話や授業の聞き取りに不安がある。言いたいことを英語にしにくい | 日常会話はできるが、長文・作文・試験問題でつまずく |
| 確認したいこと | 語彙や基本的な文の理解、話す機会、授業の難しさ、緊張の有無 | 語彙、文構造の理解、読む速さ、作文、設問への答え方 |
| 対策の出発点 | 理解できる教材と説明を使い、聞く・話す練習を少しずつ組み合わせる | 答案や技能別スコアから課題を絞り、必要な練習を組む |
会話ができるかどうかは、判断材料の1つです。ただし、親しい友達とは話せても、初対面の相手や授業中には言葉が出にくいこともあります。
次の4つに分けて確認すると、困っている場面が具体的になります。
- 聞く:日常のやり取りはわかるか。授業の説明では、どこからわからなくなるか
- 話す:身近な話題について伝えられるか。質問されたときに答えられるか
- 読む:単語、文の構造、文章全体の意味のうち、どこで止まるか
- 書く:短い文を書けるか。理由や具体例を加えて、まとまりのある文章にできるか
両方のパターンに当てはまる場合も、必ずAから始める必要はありません。学校生活での困りごとや試験までの期間を踏まえ、優先する課題を決めましょう。
パターンA|海外にいても会話や授業理解に不安が残ることはある

「現地校に通っていれば、自然に英語が身につくはず」と考えていても、実際には支援が必要になることがあります。
海外生活といっても、英語を日常的に使うとは限りません。英語圏かどうか、学校や家庭で何語を使っているかによって、学習環境は大きく異なります。
現地校の授業についていくことと、英語を学ぶことは同じではない
授業では、英語を聞き取りながら、理科や社会などの内容も理解する必要があります。日常会話では使わない言葉が増えるため、会話よりも授業の理解に苦労することがあります。
「だいたいわかるけれど、細かい説明になると難しい」という状態では、課題を終わらせるだけで精いっぱいになり、わからなかった部分を復習する余裕がないこともあります。
本人が「しんどい」と話したら、英語力だけに原因を求めず、授業の速さ、課題の量、友人関係、疲れなど、何が負担になっているかを聞いてください。
学校によっては、英語を追加の言語として学ぶ生徒向けの支援があります。EAL・ESLなどと呼ばれることがありますが、名称や内容は学校によって異なります。担任に、利用できる支援や教材の調整を相談しましょう。
身につき方を考えるときに確認したい3つの条件
- これまでの学習経験:年齢に加え、日本語や英語での読み書き、教科の理解がどこまで進んでいるか
- 英語を使う機会:滞在年数だけでなく、誰と、どのような場面で英語を使っているか
- 学校や家庭の支援:本人に合う教材、わかる言語での説明、安心して質問できる相手がいるか
「幼いときに渡航したから大丈夫」「日本人学校だから英語は伸びない」と、年齢や学校の種類だけで判断することはできません。
また、幼い子どもには、英語を聞いて理解していても、まだ自分から話さない時期が見られることがあります。話す量だけで、理解していることまで低く見積もらないようにしましょう。
参考:British Council「子どもが追加の言語として英語を学ぶ過程」。主に幼い子どもの学習についての説明です。
帰国後に英語を使う機会が減り、以前より言葉が出にくくなる場合もあります。海外にいたときの状態と、帰国後の変化は分けて考えてください。
海外経験があるのに困っているからといって、本人の能力や努力が足りないと決めつける必要はありません。今の環境と学習内容が合っているかを見直すことが出発点です。
パターンB|話せても文法・読解・試験でつまずく理由

日常会話は流暢なのに、テストでは思うように点が取れない。この差に戸惑うご家庭もあります。
会話と試験で使う英語には、共通する部分があります。ただし、長い文章を正確に読むこと、根拠を示して書くこと、制限時間内に答えることには、それぞれ練習が必要です。
日常会話では出会いにくい語彙がある
日常会話と試験の語彙は重なりますが、長文では、経済・環境・社会制度・テクノロジーなどの話題に関する言葉も出てきます。
会話で使う機会が少ない言葉は、読書や授業、試験対策を通じて補う必要があります。知っている単語でも、別の意味や、ほかの単語との組み合わせがわからない場合があります。
筆者が担当したご家庭でも、語彙が読解のつまずきにつながっていた例がありました。ただし、読めない原因がすべて単語不足とは限りません。単語の意味を確認した後に文章を理解できるかまで見てください。
感覚で使える文法と、読み書きで必要な理解に差がある
英語を使ってきた経験から、自然な言い方を感覚で選べる生徒もいます。これは、すでに身についている強みです。
一方で、長い文のつながりを読み取ったり、作文で時制や語順を整えたりする場面では、文法を整理し直すことが役立つ場合があります。
文法用語を説明できないことと、英語を理解できないことは同じではありません。用語を覚えているかだけでなく、実際の文を読めるか、意図した内容を書けるかを確認しましょう。
技能別スコアと答案を合わせて確認する
試験結果を見るときは、合否や総合点だけでなく、リーディング・リスニング・ライティング・スピーキングの内訳を確認してください。
筆者の面談でも、聞く・話す力に比べて、読む力に課題が見られるケースがありました。ただし、スコアだけでは、語彙不足なのか、時間不足なのか、設問の読み違いなのかまでは特定できません。
答案や解いたときの様子も見ながら、「どの問題で」「なぜ間違えたか」を確かめることが大切です。
なお、試験によって合否判定の仕組みは異なります。例えば英検の従来型では、3級以上の一次試験は読む・聞く・書くの3技能、二次試験は話す技能で、それぞれ合否が判定されます。話す力が高くても、そのスコアで一次試験の不足を補えるわけではありません。
出典:日本英語検定協会「英検CSEスコアとは」。受験する級・方式の判定方法も確認してください。
つまずきが長引くと、英語への自信が揺らぐこともある
学習方法と同じくらい大切なのが、本人の気持ちです。
周囲から「英語ができる子」と見られていると、試験で結果が出なかったときに、必要以上に落ち込んでしまうことがあります。
同じ級を何度も受けて届かない。本人も保護者も「今度こそ」と思っていたのに結果が出ない。こうした経験が続くと、英語に取り組むこと自体が負担になる場合があります。
面接形式の試験でも、日常会話ができれば必ず対応できるとは限りません。質問の意図を理解すること、理由を添えて答えること、緊張した場面で話すことなど、確認したい点があります。
本人が「聞き取りにくかった」と話した場合も、その感想を否定せず、音声の聞き取り、質問の理解、答えの組み立てのうち、どこで困ったかを一緒に振り返りましょう。
「英語ができないんだね」ではなく、「できていることと、これから練習することを分けよう」と伝えてください。
結果が出ない理由を、すべて「対策不足」で片づける必要もありません。知識や技能の不足、問題形式への不慣れ、緊張や疲れなどを分けて考えると、次の取り組みを決めやすくなります。
パターン別|英語ができないと感じたときの対処法

パターンA|わかる説明と、無理のない英語の練習を組み合わせる
会話や授業理解に不安がある場合は、まず、今の本人にとって理解しやすい内容から始めましょう。
日本語での説明を理解しやすい生徒なら、日本語で文の仕組みを確認する学習が助けになることがあります。語順や時制を整理できると、聞いたり読んだりした内容を理解しやすくなる場合があります。
ただし、現地校で文法を教えないとは限りません。学校の授業や支援で何を学んでいるかを確認し、足りない部分を補ってください。
筆者が担当したご家庭でも、日本語で中学範囲の文法を整理した後、資格試験や現地校の授業への理解に変化が見られた例があります。これは一例であり、同じ方法がすべての生徒に合うわけではありません。
年齢や日本語の理解度によっては、文法用語を使う説明より、絵・具体物・短い例文を使う方が取り組みやすいこともあります。
説明を受ける学習に加えて、次のような練習を組み合わせましょう。
- 理解できる音声を聞く:短い会話や、内容を知っている物語などから始める
- 使いたい表現を練習する:質問する、聞き返す、困っていることを伝える言い方を確認する
- 短いやり取りを重ねる:身近な話題で、安心して話せる相手と練習する
- 学校の教材とつなげる:授業でわからなかった言葉や文を、少しずつ確認する
英会話の機会を増やすことにも意味があります。ただし、難しすぎる内容を聞き続けたり、発言を急かされたりすると負担になることがあります。量とともに、内容のわかりやすさと安心して練習できる環境を大切にしてください。
パターンB|語彙・読解・作文の課題を絞って練習する
会話ができる場合は、その強みを生かしながら、答案から見つかった課題を補います。全分野を最初からやり直す必要があるとは限りません。
- 語彙を計画的に学ぶ:目標に合った教材を使い、意味だけでなく例文や使い方も確認する
- 時間を空けて思い出す:一度覚えて終わりにせず、小テストなどで定着を確かめる
- 長文は正確さと速さを分けて練習する:まず内容と解答の根拠を確認し、その後、時間を計って取り組む
- 作文は添削後に書き直す:語彙・文法に加え、質問に答えているか、理由が伝わるかを確認する
- 面接は答え方も練習する:質問の意図を捉え、必要に応じて理由や具体例を加えて話す
気をつけたいのは、過去問を解いて点数を確認するだけで終わることです。わからなかった言葉や間違えた理由を、その後の学習につなげましょう。
過去問は、実力の確認にも、解き直しを通じた学習にも使えます。ただし、同じ問題の答えを覚えて正解できることと、初めての問題に対応できることは違います。
過去問で課題を見つけ、必要な知識や解き方を練習し、別の問題で確かめるという流れを作ってください。
帰国後に英語を使う機会をどう確保するかについては、次の記事でも紹介しています。
▶ 帰国子女の英語維持|小学生・中学生・高校生別に何をすべきか解説
家庭だけで抱えず、必要に応じて相談先を決める

本人に合う教材と習慣があれば、家庭で進められる学習もあります。一方、何につまずいているかわからない場合や、親子での学習が負担になっている場合は、学校や講師に相談してみてください。
相談先を選ぶときは、「帰国子女に対応しているか」だけでなく、今の困りごとを具体的に見てもらえるかを確かめましょう。
- 現地校の授業で困っている:担任や英語学習支援の担当者に、授業・課題への支援を相談する
- 試験で伸び悩んでいる:答案や技能別スコアを見て、対策を提案できる講師に相談する
- 作文や面接に課題がある:添削や模擬面接の内容、振り返りの方法を確認する
- 話すことに不安がある:本人のペースでやり取りできるか、体験で確かめる
集団の英語塾でも、レベルや目的が合えば選択肢になります。技能ごとの差が大きい場合や、説明の仕方を細かく調整してほしい場合は、1対1の指導も検討できます。
海外在住でオンライン指導を利用するなら、時差や夏時間を含めた受講可能時間、学校の教材への対応、帰国後の継続条件を確認してください。
トライのオンライン個別指導塾を候補にする場合は、学習相談で「会話」「学校の授業」「試験」のどこに困っているかを伝えましょう。料金や受講を検討する際の情報は、次の記事にまとめています。
▶ トライのオンライン個別指導塾「帰国子女コース」の料金と口コミ評判を解説
帰国子女の英語についてよくある質問
現地校に通っていれば、いずれ話せるようになりますか?
現地校への在籍だけで、話せるようになる時期を判断することはできません。英語を使う機会、授業の難しさ、学校の支援、本人の学習経験などによって異なります。
授業や友達との会話で困っている場合は、「そのうち慣れる」と待つだけでなく、学校に相談してください。本人にわかりやすい説明と、無理なく英語を使う練習を組み合わせることが大切です。
話せるのに資格試験に落ちます。英語力が足りないのでしょうか?
不合格という結果だけで、英語力全体が低いとはいえません。語彙や読解などの課題に加え、時間配分や設問への答え方が影響している場合もあります。
技能別スコアと答案を確認し、何を練習すべきかを絞りましょう。「話せるのだから受かるはず」と考えず、試験で求められる内容を確かめることが大切です。
オンライン英会話を増やせば改善しますか?
会話の練習や、話すことへの自信をつける助けになる場合があります。ただし、回数を増やすだけで、読解や作文の課題まで解決するとは限りません。
読む・書く力も伸ばしたい場合は、文章を読んで話し合う授業や、作文の添削などを取り入れられるか確認してください。サービス名よりも、授業で何をするかを見て選びましょう。
本人が英語を嫌がるようになりました。どう接すればよいですか?
まず、何が嫌なのかを責めずに聞いてください。難しさ、疲れ、失敗への不安、周囲の期待など、学習内容以外の負担があることも考えられます。
必要に応じて学習量や受験時期を見直し、「短い文章の内容がわかった」「自分から1つ質問できた」など、本人が実感できる目標に置き換えましょう。点数や合否だけでなく、できるようになったことを一緒に確かめてください。
まとめ|「英語ができない」を、具体的な課題に分けて考える
帰国子女の英語の悩みは、海外にいた年数や、会話の流暢さだけでは判断できません。
- 会話・授業理解の不安と、読み書き・試験のつまずきを分けて確認する
- 2つのパターンは目安であり、両方に当てはまる場合もある
- 年齢や在籍校だけで、本人の英語力や伸び方を決めつけない
- 試験結果は、技能別スコアと答案を合わせて振り返る
- 理解しやすい説明と、課題に合う練習を組み合わせる
- 家庭での学習が負担になる場合は、学校や講師に相談する
大切なのは、すでにできていることを認めたうえで、次に練習することを具体的にすることです。
「帰国子女なのに」という周囲の期待が、本人の負担になっていることもあります。「何ができないか」だけでなく、「何ならできるか」「どんな助けがあれば進められるか」を一緒に考えていきましょう。
※本文中の経験談は、筆者が担当したご家庭で見られた事例を一般化したもので、特定の生徒・ご家庭を識別できる情報は含みません。学習方法の適性や成果には個人差があります。試験制度については、受験する級・方式の公式情報をご確認ください。
最後までお読みいただき、ありがとうございました。




