帰国子女が国語についていけない4つの段階|今どこかで対策が変わる

「日本語で話せているのに、国語だけついていけない」

帰国子女のご家庭から寄せられる悩みのひとつです。日常会話に不自由がないため、周囲に困りごとが伝わりにくく、本人も「何がわからないのか」を説明できないことがあります。

先に結論をお伝えします。「国語についていけない」を一括りにせず、どこでつまずいているかを確認しましょう。漢字の読み書きなのか、言葉の意味なのか、記述の組み立てなのかによって、優先する対策が変わります。

原因に合わない問題集を繰り返しても、努力が成果につながりにくいことがあります。まずは、今できていることと、助けが必要なことを分けることが大切です。

この記事では、私が教育プランナーとして担当したご家庭の相談経験をもとに、国語のつまずきを4つの観点から整理し、それぞれの確認方法と対策を解説します。

目次

帰国子女が国語についていけない理由|日常会話と教科学習では必要な力が違う

帰国子女が国語についていけない理由|日常会話と教科学習では必要な力が違う

日本語で会話ができることと、教科書を読んで理解し、答えを文章にまとめられることは同じではありません。

家庭で使う日本語は、身近な話題が中心になりやすいものです。一方、学校の授業では、教科特有の用語や抽象的な言葉を理解し、長い文章から必要な情報を読み取る力も求められます。

現地校やインターナショナルスクールに通っている場合、日本語で読む・書く機会が限られることがあります。ただし、日本人学校や補習校への通学、家庭での読書などによって、学習経験は一人ひとり異なります。

そのため、「海外にいたから国語が苦手」「読み書きの量を増やせば解決する」と決めつけず、これまで日本語で何を学び、今どの作業に困っているかを確認してください。

本人には、「会話ができるのに、なぜできないの?」ではなく、「学校で使う言葉や書き方を、一緒に練習していこう」と伝えるとよいでしょう。

参考:群馬県「日本語指導を始める前に」。日常会話の力と、学習活動に参加するための言葉の力の違いについて説明されています。

国語についていけないときの4つのつまずき|まず困っている箇所を確認する

対策を始める前に、何が難しいのかを整理しましょう。この記事では、確認する観点を次の4つに分けています。

確認する観点困っている状態確認の手がかり
①漢字漢字が読めない・書けない音読で止まる。読めても、書くときに手が止まる
②語彙・文章理解言葉の意味や、文同士のつながりがわからない言葉の意味を説明すると理解が進むか、内容を自分の言葉で話せるかを見る
③記述答えを文章にまとめられない口頭では説明できても、書くと必要な内容が抜ける
④時間配分時間内に解き終わらない読む・考える・書く作業のどこに時間がかかっているかを見る

※この4つは、必ず順番に進む発達段階ではありません。複数のつまずきが重なる場合や、教材の難しさによって困る箇所が変わる場合もあります。

家庭で確認するなら、まずは教科書や問題集の短い文章を一緒に読んでみてください。音読に加えて、言葉の意味、内容の説明、短い記述も確かめると、困っている箇所が見えやすくなります。

音読だけでは、漢字を書く力や文章の理解まで判断できません。また、すらすら読めても意味を十分につかめていないことがあります。短時間で原因を確定するのではなく、学習の様子を知る手がかりとして使いましょう。

家庭では判断しにくい場合は、学校や補習校、指導を受けている先生に、実際の答案や音読の様子を見てもらってください。

つまずき①|漢字が読めないと、国語以外の教科にも影響する

つまずき①|漢字が読めないと、国語以外の教科にも影響する

漢字の読みで文章の理解が止まっている場合は、読み方と意味を優先して確認しましょう。国語以外の教科でも、日本語の文章を読む必要があるからです。

算数の文章題、理科の実験の説明、社会の資料などでは、内容を理解する前に、漢字や教科用語が壁になっていることがあります。

面談でも、算数の「通分」、国語の「段落」など、授業で使われる言葉の意味がわかっていないケースがありました。読み方を知っていても、何を指す言葉なのか理解していない場合があります。

なお、「読めない」と「読めるけれど書けない」は分けて考えてください。読む力を補う必要があるのか、漢字を思い出して書く練習が必要なのかで、取り組む内容が変わります。

音読では、同じ箇所で止まる理由を確認する

音読を続けるときは、読んだ回数だけでなく、どこで止まるかを見てください。

同じ箇所で繰り返し止まる場合は、漢字の読みを覚えていないのか、言葉の意味がわからないのか、文が長くて読みづらいのかを確認しましょう。

その場で正しい読み方を伝えて終わりにせず、別の日や別の文でも読めるかを確かめると、定着の様子がわかります。

対策は「読み・意味・書き」を分けて確かめること

漢字は、何ページ練習したかに加えて、何ができるようになったかを確認しましょう。

  • 少量の確認テストを入れる:読める漢字と、書ける漢字を分けて記録する
  • 書くときは字形や筆順も確認する:間違えやすい部分を見つけ、必要な箇所を練習する
  • 読み方と意味を結びつける:熟語や短い例文の中で使い方を確かめる

担当したご家庭でも、漢字を丁寧に確認する指導に切り替えたことで、学習に取り組みやすくなった例がありました。ただし、漢字をすべて書けるようになるまで読解を待つ必要はありません。

必要に応じてふりがなを使いながら文章を読み、読み書きの練習を並行して進めましょう。

つまずき②|読解問題が解けないときは、語彙と文章の理解を確認する

つまずき②|読解問題が解けないときは、語彙と文章の理解を確認する

読解問題が解けないときは、まず文章中の言葉の意味を理解しているか確認してください。

知らない言葉が多いと、文章の内容をつかみにくくなります。一方で、言葉を知っていても、主語と述語の関係や、理由と結論のつながりを読み取ることに難しさがある場合もあります。

「読解力がない」とまとめず、どの説明があれば理解できるかを見ていきましょう。

見分ける手がかりは「言葉の意味を伝えると理解が進むか」

解けなかった問題について、文章中の難しい言葉の意味を説明し、もう一度考えてもらってください。

私が担当した生徒にも、言葉の意味を補うと正解できる問題が増えた例がありました。その場合は、語彙が理解を妨げる要因のひとつになっていると考えられます。

ただし、答えの根拠や解き方まで教えた場合は、語彙だけが原因だったとは判断できません。何を説明すると理解が進んだかを分けて見てください。

言葉の意味を伝えても難しい場合は、「誰が何をしたのか」「何が理由なのか」「問いでは何を聞かれているのか」を一緒に確認しましょう。

対策は「知らない言葉を、使われ方と一緒に残す」

読解で出会った知らない言葉は、意味だけでなく、使われていた文と一緒に残すと復習しやすくなります。

ノートには、言葉・短い意味・例文をまとめましょう。書く量が負担になる場合は、教材に印をつけたり、保護者が記録を手伝ったりしてもかまいません。

調べた言葉は、後日もう一度意味を説明してもらう、自分で短い文を作るなどして確認してください。写して終わりにしないことが大切です。

「この言葉、知っている?」だけでなく、「ここではどういう意味だと思う?」と聞くと、文章の中で理解できているかを確かめられます。

つまずき③|選択問題は解けるのに、記述になると書けない

つまずき③|選択問題は解けるのに、記述になると書けない

選択問題や書き抜きはできても、答えを自分の言葉でまとめると難しくなることがあります。

記述では、問いに合う内容を選び、本文の根拠を使って、必要な情報を文章にすることが求められます。日本語で書く経験に加え、問いの理解や答えの組み立て方も確認が必要です。

例えば、次のような状態です。

  • 選択肢があれば、正しい答えを選べる
  • 本文の該当箇所は見つけられる
  • 自分で書くと、理由が抜けたり、何を答えたいのかわかりにくくなったりする

この場合は、口頭でどこまで説明できるかを確認すると、文章にする部分が難しいのか、内容の整理から必要なのかを見分ける手がかりになります。

対策は「口頭で根拠を説明してから、短く書く」

書き始められない場合は、先に「なぜその答えになると思った?」と聞いてみてください。

本文のどこを根拠にしたかを一緒に確認し、答えに必要な内容を整理してから文章にすると、取り組みやすくなることがあります。

例えば、理由を聞かれている問題なら、「何が起きたか」と「それがどのような理由になるか」を整理します。最初は短い一文から始め、必要に応じて情報を加えましょう。

担当した生徒にも、本文の根拠を口頭で説明する練習を重ね、記述の改善につながった例がありました。

書いた後は、問いに答えているか、必要な内容が入っているか、文として意味が通るかを確認してください。学校や塾の先生などに見てもらえると、自分では気づきにくい不足を確かめられます。

つまずき④|時間内に解き終わらないときは、読む・考える・書く時間を分けて見る

つまずき④|時間内に解き終わらないときは、読む・考える・書く時間を分けて見る

時間が足りない原因は、読む速度だけとは限りません。文章を何度も読み直す、選択肢で迷う、記述に時間をかけすぎるなど、さまざまな理由があります。

まずは問題を解く様子を見て、本文を読む時間、設問を考える時間、答えを書く時間のどこで止まっているかを確認しましょう。

自宅で模試や過去問を解くときは、制限時間になったところで印をつけ、その時点の答案を残してください。その後、時間を延長して解いた分は、別の色で書き足すと区別できます。

時間内の得点と、時間をかければ解けた得点を分けることで、理解の課題と時間配分の課題を整理しやすくなります。

読む部分で時間がかかるなら、語彙や文の理解も確認する。ひとつの設問で止まるなら、いったん先へ進む練習をする。測った結果に合わせて、練習する内容を変えることが大切です。

学年より下の教材から始めることを、恐れなくていい

学年相応の教材が難しい場合は、必要な部分だけ前の学年に戻って学んでもかまいません。

例えば、中学生が小学校の漢字や短い読解文から確認することもあります。学年を下げること自体が目的ではなく、今の課題に合う難しさを選ぶことが大切です。

漢字は前の学年の内容を復習し、読解では年齢に合った話題の文章を読むなど、力によって教材を分ける方法もあります。すべての学習を同じ学年まで戻す必要はありません。

難しすぎる教材が続くと、自信を失うことがある

担当したご家庭には、海外では日本語が得意だと思っていた生徒が、日本の学年相応の授業を難しく感じ、自信を失った例がありました。

その後、本人に合う難しさまで戻して学習を進めることで、取り組みを立て直していきました。

できない問題ばかりが続くと、日本語の学習そのものを嫌いになってしまうこともあります。「簡単な教材に戻された」と受け止めないよう、何を確認するために使うのか、できるようになったら何へ進むのかを伝えましょう。

教材選びに迷う場合は、実際に解いた答案を先生に見てもらい、無理なく取り組める内容を相談してください。

補習校に通っている場合も、定着と目標を確認する

補習校に通っている場合も、定着と目標を確認する

補習校に通っているかどうかに加えて、授業で学んだ内容が身についているかを確認しましょう。

補習授業校は、主に現地校などに通う子どもが、土曜日や放課後などに日本の教科書を使って国語・算数などを学ぶ場です。授業時間や指導内容は学校によって異なります。

日本語で学ぶ機会や、友達と関わる場として大切な役割があります。一方、本人が困っている単元をどこまで復習できるか、志望校の入試対策まで扱うかは、個別に確認が必要です。

面談では、「補習校には通っているが、習った漢字が定着していない」「授業の難しさが合っていない」という相談もありました。

その場合は、新しい教材や塾を増やす前に、補習校の宿題・答案・先生からの助言を確認し、何が不足しているかを整理することから始めましょう。

家庭での復習で補えるのか、学校に相談できるのか、追加の指導が必要なのかは、その内容によって判断してください。

参考:外務省「海外教育」

国語の伸びは偏差値だけでは見えにくい|測り方を増やす

模試の偏差値だけでは、日々の小さな成長を捉えきれないことがあります。

偏差値は、同じ模試を受けた人の中での位置を示すものです。覚えた言葉が増えたり、記述の内容が改善したりしていても、すぐに数字へ表れるとは限りません。

語彙の学習は、知識問題だけでなく文章理解の土台にもなります。「偏差値が動かないから意味がない」と判断せず、できるようになったことを別の方法でも確認しましょう。

  • 漢字の確認テスト:前に間違えた漢字を、日を空けても読める・書けるか
  • 語彙の説明:覚えた言葉の意味や使い方を、自分の言葉で説明できるか
  • 記述の内容:問いに合う答えと、本文の根拠を書けるようになったか
  • 時間内に解けた範囲:同程度の問題で、正確さを保ちながら進められるようになったか

問題集の進んだページ数も、取り組みを振り返る記録になります。ただし、進んだ量と身についた量は別なので、以前の問題を解き直す機会も設けてください。

模試の解く順番も、本人に合わせて検討しましょう。配点の高い問題を必ず先にするのではなく、正解できる問題を取り切れているか、ひとつの問題に時間をかけすぎていないかを見直すことが大切です。

帰国しない場合でも、日本語力を維持する意味はある

日本に帰国しない可能性が出てきた場合は、日本語を学ぶ目的を本人と話し合ってみてください。

帰国後の受験以外にも、日本語で本を楽しむ、家族と考えを伝え合う、将来の進路の選択肢を持つなど、学び続ける意味はあります。

担当したご家庭にも、日本の学校への進学の可能性が低くなった後、「日本語力は維持してほしい」という希望から学習を続けた例がありました。

その際は、受験対策をそのまま続けるのではなく、本人の目的に合う目標へ見直すことが大切です。

好きな本を一冊読む、出来事を短い文章にまとめる、家族に日本語で説明するなど、日常の中で続けられる目標でもかまいません。

本人が納得できる目的と、無理のない学習量を一緒に考えましょう。

帰国子女の国語は、どこで見てもらうか

帰国子女の国語は、どこで見てもらうか

家庭で取り組めることはありますが、原因がわからない、記述をどう直せばよいか迷う、親子での学習が負担になっている場合は、先生に相談すると進めやすくなります。

相談先を選ぶときは、次の点を確認してください。

  • 学習歴を確認してくれるか:学校の種類、日本語で学んできた内容、今の教材を見てもらう
  • 実際の読み書きを見てくれるか:学年や点数だけでなく、音読や答案から課題を整理してもらう
  • 記述の直し方まで教えてくれるか:正解例を渡すだけでなく、足りない内容を説明してもらう
  • 教材や進度を調整できるか:必要な部分は前の学年に戻り、得意な部分は進められるか確認する

まずは、通っている学校や補習校の先生に相談する方法があります。集団授業だけでは補いにくい課題がある場合は、個別に教材や進め方を調整できる指導も選択肢になります。

海外在住でオンライン指導を検討する場合は、時差に合う受講時間、教材の共有方法、記述答案への添削方法を確認しましょう。帰国後も続けたい場合は、時間帯や担当講師を継続できるかも相談してください。

トライのオンライン個別指導塾が、ご家庭に必要な国語の支援に合うかを検討したい方は、料金や実際の使われ方をまとめた次の記事も参考にしてください。

トライのオンライン個別指導塾「帰国子女コース」の料金と口コミ評判を徹底解説!

帰国子女の国語についてよくある質問

何から手をつければいいですか?

まずは短い文章を一緒に読み、読めない漢字、意味がわからない言葉、説明しにくい内容を確認してください。音読だけで決めず、短い記述や学校の答案も見ると、優先して練習することを整理しやすくなります。

漢字はどのような教材を選べばいいですか?

学年表示だけでなく、本人がどこまで読める・書けるかに合わせて選びましょう。読み方や意味、使い方を確認でき、無理のない量で復習できる教材が候補になります。まずは学校や補習校の教材で、未定着の漢字を確かめてもよいでしょう。

学年より下の教材を嫌がります

何を練習するための教材なのかと、できるようになった後の進み方を説明してください。すべてを前の学年に戻すのではなく、漢字や特定の単元だけを復習する方法もあります。本人の年齢や興味に合う文章を選ぶことも大切です。

読解の問題集を何冊もやれば伸びますか?

冊数だけでは判断できません。知らない言葉を理解する、本文の根拠を確認する、記述を書き直すなど、間違えた理由に合わせた復習が必要です。次の問題集へ進む前に、以前解けなかった問題を説明できるか確かめましょう。

国語の苦手は、他の教科にも影響しますか?

教科用語や問題文の理解が難しい場合は、算数・数学、理科、社会などにも影響することがあります。ただし、教科そのものの知識が不足している場合もあるため、日本語の説明を補うと解けるのか、内容から学び直す必要があるのかを分けて確認してください。

まとめ

  • 日常会話と、教科学習に必要な日本語の力は分けて考える
  • 漢字・語彙と文章理解・記述・時間配分の4つの観点から、困っている箇所を確認する
  • 音読だけで判断せず、言葉の意味、内容の説明、書いた答案も見る
  • 記述は、本文の根拠を口頭で整理してから書く方法も試す
  • 必要な部分は、学年より下の教材で復習してよい
  • 偏差値に加え、以前できなかったことができるようになったかを確認する

国語についていけないと感じても、すべてを最初からやり直す必要はありません。今できていることを確かめ、困っている部分に合う練習を選ぶことから始めましょう。

まずは、教科書の短い文章や最近の答案を、本人と一緒に見てみてください。「どこが難しかった?」と聞き、家庭で判断しにくい場合は先生に相談しましょう。

受験を控えている場合は、国語の基礎を補う時間と、入試問題に取り組む時間の両方を考える必要があります。中学受験の進め方は、次の記事で整理しています。

帰国子女の中学受験はいつから準備する?帰国時期別の進め方と条件

※本記事は、筆者の相談経験をもとに、学習のつまずきと確認方法を整理したものです。4つの分類は診断基準ではありません。事例は個人が特定されないよう情報を省略・抽象化しており、同じ方法で同じ成果が得られることを保証するものではありません。

最後までお読みいただき、ありがとうございました。

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