「現地校ではよくできているのに、日本の算数になると解けない」
「帰国後の授業や受験に向けて、どこから準備すればよいのだろう」
現地校やインターナショナルスクールに通うお子さんについて、このような不安を感じていませんか。
日本の問題が解けないときは、まず「まだ習っていない」「日本語の用語や問題文が分からない」「内容の理解や定着が十分でない」の3つを確認しましょう。現地で学ぶ内容や順序が違うため、学年だけでは判断しにくいことがあります。
大切なのは、できている内容まで最初からやり直すのではなく、何に困っているかを単元ごとに確かめることです。ただし、原因がひとつとは限らず、必要に応じて関連する基礎にも戻ります。
この記事では、元教育プランナーとして担当したご家庭での相談経験をもとに、原因の見分け方、家庭での確認手順、小学生・中学生・高校生それぞれの対策を解説します。
海外在住で算数・数学につまずく理由|学ぶ順序や言葉が違うことがある

日本の教材が解けないことだけで、「算数・数学が苦手」と決めつける必要はありません。
国や地域、学校、履修している課程によって、学ぶ内容や順序は異なります。現地で授業を理解していても、日本の同学年で扱う内容をまだ学んでいない場合があります。反対に、現地で先に学んでいる内容もあります。
さらに、使う言葉や記号、計算の書き方、答えの説明方法が違うことで、慣れていない問題に戸惑う場合もあります。
一方、カリキュラムの違いだけでなく、習った内容の理解や練習が十分でないこともあります。これまで学んだ教材と、実際に解く様子の両方を見て、必要な対策を考えましょう。
算数・数学には、前に学んだ内容を使って考える単元が多くあります。例えば、分数の計算で止まっている場合は、分数の意味や通分など、どの部分に確認が必要かを分けて見ていきます。
算数・数学につまずく主な3つの原因|未習・日本語・理解と定着を確認する

新しい問題集を増やす前に、今使っている教材や答案で、何に困っているかを確認してください。
| 主な原因 | 状態 | 確認の手がかり |
|---|---|---|
| ①未習 | その内容をまだ学んでいない | 現地の教材や先生への確認で、未習の内容だと分かる |
| ②日本語の用語・問題文 | 数学的な内容は分かるが、日本語の表現が理解しにくい | 用語の意味を伝えたり、本人が学んでいる言語で確認したりすると理解が進む |
| ③理解・定着 | 習った内容でも、考え方や手順を十分に使えない | 言葉を確認した後も、立式や計算、理由の説明でつまずく |
※この3つは、学習内容を整理するための観点です。複数が重なることもあり、疲れや緊張、問題形式への不慣れなどが影響する場合もあります。
見分けるときは、学習歴と解く様子を合わせて見る
「手が止まったから未習」「計算を間違えたから未定着」と、反応だけで判断しないでください。
まず、現地の教科書やノートを見ながら、同じ内容を学んだことがあるか確認します。そのうえで、日本の基本問題に少量取り組み、どこで困ったかを聞いてみましょう。
- 習った内容かを確認する:単元名が違う場合は、例題や図も見比べる
- 問題で何を求めているか聞く:言葉や指示の意味が分かっているか確認する
- どこから分からなくなったかを見る:条件の整理、立式、計算、答えの書き方を分ける
- 説明した内容を記録する:用語だけを伝えたのか、解き方まで教えたのかを区別する
家庭だけで分けにくい場合は、答案と現地の教材を先生に見てもらうと相談しやすくなります。
日本語の用語は、意味と具体例を結びつける
「通分」「最小公倍数」「垂直二等分線」などは、内容を学んでいても、日本語でどう呼ぶかを知らない場合があります。
その場合は、日本語の用語・本人が学んでいる言語の表現・図や例題を並べると確認しやすくなります。
例えば「通分」なら、言葉の訳だけを覚えるのではなく、分数の大きさを変えずに分母をそろえる操作を、具体的な分数で確かめます。
その場で分かったように見えても、別の問題や別の日に使えるか確認してください。用語の説明だけでは難しい場合は、内容そのものの理解も見直しましょう。
現地校の成績が良くても、日本で必要な範囲は別に確認する
現地校の成績は、そこでの学習状況を知る大切な資料です。ただし、それだけで日本の授業や入試への対応まで判断できるとは限りません。
学んでいる範囲に加え、テストで求められる説明、制限時間、使用できる道具などが異なる場合があるからです。
担当したご家庭にも、現地校ではよい評価を得ていたものの、日本の教材に取り組んだ際、解き方が分からない問題が見つかった例がありました。
このような場合は、まず、その問題が日本の学校で扱う基本内容なのか、受験向けの応用問題なのかを確認します。受験教材の難問が解けないことを、そのまま「日本の学年より遅れている」と捉えないでください。
帰国後の授業への準備なら教科書の基本問題から、受験を考えているなら必要な範囲と問題形式も確認しましょう。一時帰国を待たず、手元の教材やオンラインで共有できる答案でも始められます。
学年だけでなく「単元」で確認する|必要な内容に絞って学ぶ

学年は範囲を確認する目安にし、実際に取り組む内容は単元ごとに決めましょう。
現地で先に学んだ内容と、まだ習っていない内容が混在している場合、学年全体を最初からやり直す必要はないことがあります。
ただし、広い範囲で基礎が不安定なら、前の学年の教材でまとめて復習する方法もあります。単元を細かく分けること自体を目的にせず、理解しやすい順序を考えてください。
単元チェックシートを作る
日本の教科書の目次を使い、次の手順で整理します。
- 帰国後の学年や受験範囲を参考に、確認する単元を選ぶ
- 現地の教材と照らし合わせ、習った内容かを確認する
- 基本問題に取り組み、日本語の理解と解き方を確かめる
- 次に取り組む内容と、もう一度確認する時期を記録する
記入例は、次のとおりです。
| 単元・内容 | 確認できたこと | 次に取り組むこと |
|---|---|---|
| 通分 | 操作はできるが、日本語の用語を知らなかった | 用語と例題を結びつけ、別の問題でも確認する |
| 割合の文章題 | 計算はできるが、何を基準にするか迷う | 数量の関係を図にし、式の意味を説明する |
| 一次方程式 | 習っているが、途中の符号で間違える | 途中式を確認し、必要に応じて正負の数を復習する |
| 図形の証明 | 現地の授業ではまだ扱っていない | 必要な図形の性質を確認し、理由を順に説明する練習から始める |
※上記は記入方法を示すための例であり、特定の生徒の記録や、各国の学習順序を示すものではありません。
担当した高校生でも、現地で学んできた内容を日本の課程と照らし合わせ、必要な単元を整理するところから始めたことがありました。
単元数だけで学習時間を見積もるのではなく、理解に必要な時間や、関連する基礎の復習も含めて計画しましょう。
日本の学習内容を確認する資料:文部科学省「学習指導要領・解説」。家庭では、まず使用する教科書の目次と例題から確認すると取り組みやすくなります。
教材は「学校の補習」か「受験対策」かを分けて選ぶ
未習の内容には、説明と例題がある教材を使いましょう。解説なしに問題だけを解き続けても、取り組みにくいことがあります。
学校の授業への準備なら、教科書に沿った基本問題で確認します。受験対策なら、基本の理解を確かめたうえで、志望校に必要な応用問題や記述形式へ進みます。
今使っている教材で確認できる場合は、新しい問題集を何冊も増やす必要はありません。不足している説明や練習だけを補いましょう。
文章題が解けないときは、日本語の理解と立式を分けて見る
計算ができても文章題が解けない場合、原因が日本語だけにあるとは限りません。言葉の意味、条件の整理、数量の関係、式を作る考え方などを確認する必要があります。
まず、問題文を読んだ後に「何が分かっていて、何を求める問題?」と聞いてみてください。そのうえで、次のように支援を分けます。
- 読みづらい場合は、問題文をそのまま読み上げる
- 知らない言葉があれば、その意味を説明する
- 条件を整理できない場合は、図や表にしてもらう
- 式が作れない場合は、数量同士の関係を確認する
どの支援で理解が進んだかを記録すると、次に練習する内容を考えやすくなります。
ただし、図の描き方や使う計算まで教えて解けた場合は、「日本語だけが原因だった」とは判断できません。説明後に、似た別の問題を自力で解けるかも確かめましょう。
日本語の読み書きでも困っている場合は、次の記事も参考にしてください。
▶ 帰国子女の国語のつまずきと、家庭で確認したい対策はこちら
小学生・中学生・高校生|学年別に確認したい内容

確認する内容は、年齢だけでなく、これまでの学習歴と帰国・進学の予定によって変わります。次の項目を出発点に、本人に必要な範囲を選んでください。
小学生|数や計算の意味と、日本語の用語を確認する
学年に応じて、数の大きさや位、四則計算、小数・分数、単位、図形などを確認します。計算の答えだけでなく、何をしている計算なのかも説明してもらいましょう。
小数や分数でつまずく場合は、計算手順だけを繰り返すのではなく、図や数直線で大きさを確かめる方法があります。
計算を間違えたときは、問題の写し間違い、位のずれ、手順の混同など、答案から分かることを記録してください。「ケアレスミス」でまとめず、どこを直すとよいかを考えます。
中学受験を考えている場合は、学校の基本内容と受験向けの問題を分け、必要な対策を相談しましょう。
中学生|方程式・関数・図形などを、関連する基礎と一緒に確認する
中学数学では、正負の数や文字式の計算が、方程式などの学習につながります。今の問題で止まっている場合は、その問題に必要な基礎まで戻って確認してください。
ただし、計算が苦手だから図形もすべて分からない、といった判断はできません。方程式・関数・図形・データの扱いなど、分野ごとに学習状況を見ていきましょう。
担当したご家庭では、補習校で日本の教科書を使っていたことが、進学準備で学習範囲を整理する手がかりになった例がありました。
この場合も、習った範囲がそのまま定着しているとは限りません。基本問題や説明する課題を通じて、復習が必要な部分を確認します。
補習校の続け方については、次の記事で整理しています。
▶ 補習校をやめるか続けるか、負担と学習の目的から考える方法はこちら
高校生|現地の履修内容と、志望校で必要な科目・範囲を照らし合わせる
高校生は、最初に進学先と入試方式を確認しましょう。日本の大学を受験する場合も、すべての方式で数学が必要になるわけではありません。
数学を使う場合は、募集要項に記載された科目・出題範囲と、現地で履修している内容を照らし合わせます。出題形式や、途中の考え方をどこまで書くかも確認してください。
担当した生徒でも、現地の資格試験に向けた学習と、日本の受験に必要な数学の確認を分けて進めたことがありました。現地で身につけた力を生かしながら、不足する内容を補っていきます。
現地の資格や成績を利用する方式を考えている場合は、その評価条件も確認しましょう。日本の一般選抜向けの対策を一律に追加する必要はありません。
現在の学習状況をどう測るか|自宅受験では条件をそろえる

学習状況の確認には、基本問題、小テスト、模試、過去問などが使えます。理解している内容を知りたいのか、試験時間内の得点を知りたいのかで、確認方法を分けましょう。
海外での模試の受験方法は、地域や主催者によって異なります。利用できる会場や自宅受験の条件は、主催者の案内で確認してください。
自宅受験だから結果が必ず高く出るわけではありません。ただし、時間を延長したり、解答中に助言を受けたりすると、指定条件で受験した結果とは比較しにくくなります。
担当したご家庭でも、結果を確認する際に、時間や助言の条件を整理し直す必要があった例がありました。
- 模試は主催者の実施要領に従う:時間、監督、使用できる用具、答案の提出方法を確認する
- 過去問は制限時間時点の答案を残す:終了後に解き直す場合は、別の紙や色で区別する
- 理解を確認する練習では、どんな支援をしたか記録する:用語の説明と解き方の助言を分ける
一時帰国中に会場受験ができれば、本番に近い環境を経験する機会になります。ただし、そのためだけに帰国する必要はなく、費用や日程も含めて検討してください。
得点に加えて、どの単元で止まったか、時間をかければ解けたか、説明を受けた後に解けたかを記録すると、次の学習につなげやすくなります。
帰国時期が決まらないときは、基礎学習と進路の確認を並行する
帰国時期が未定でも、今の学習状況を整理することはできます。現地校の学習を大切にしながら、日本での進学の可能性に応じて、必要な準備を考えましょう。
担当したご家庭にも、帰国時期によって受験や編入の方針が変わるため、進路を検討しながら算数・国語の基礎学習を続けた例がありました。
ただし、志望校の確認や対策を、帰国時期が決まるまで待てばよいとは限りません。候補校の出願条件、募集時期、必要科目は早めに調べておきましょう。
- 考えられる帰国時期と、進学・編入の候補を整理する
- 候補校で必要になる科目や範囲を確認する
- 複数の進路で役立つ基礎を優先し、学校別対策の開始時期も相談する
学習量は、現地校の課題や本人の負担に合わせて調整してください。「日本の全範囲を急いで終える」より、必要な内容を継続して確認する計画が現実的です。
海外から算数・数学を学ぶなら、教材と指導先をどう選ぶか

日本の算数・数学を補う方法には、家庭学習、通信教育、補習校、個別指導などがあります。本人がどこまで自分で進められるかと、必要な支援から選びましょう。
| 方法 | 検討しやすい場合 | 確認する点 |
|---|---|---|
| 家庭学習・通信教育 | 学ぶ内容が分かり、説明や例題を見ながら進められる | 海外での利用・教材入手、質問対応、保護者の付き添い |
| 補習校・集団指導 | 授業の進度が合い、定期的に日本語で学びたい | 指導範囲、宿題の量、苦手部分への対応 |
| オンライン個別指導 | 原因の整理や、単元・進度の調整が必要 | 講師の経験、答案の共有方法、時差、費用、授業外の学習 |
自分に必要な単元を選んで学びたい場合は、個別に内容を調整できる指導が選択肢になります。ただし、1対1という人数だけで、必要な対応ができるかは決まりません。
- 現地の教材と日本の教材を見てくれるか:学年名だけで判断せず、学習歴を確認してもらう
- 日本語の問題か、数学的な理解の問題かを分けて見てくれるか:必要に応じて図や、本人が理解しやすい言葉を使ってもらう
- 途中式や説明から課題を整理してくれるか:答えの正誤だけでなく、考え方を確認してもらう
- 現地校の課題と両立できる計画を相談できるか:宿題の量や受講回数を調整できるか聞く
オンラインで受講する場合は、時差に合う時間、手書き答案の共有方法、途中式を見てもらう方法を確認しましょう。帰国後も継続したい場合は、時間帯や担当講師を引き継げるかも相談してください。
とはいえ、ここまでの条件を満たすサービスを一から探すのは大変です。海外からの受講に対応し、算数・数学を含む全科目を見てもらえるオンライン家庭教師を比較しました。
▶ 帰国子女におすすめのオンライン家庭教師5選|専門塾・現地塾との違いも解説
海外在住の算数・数学についてよくある質問
現地校でよくできていれば、帰国後も大丈夫ですか?
現地で身につけた力は、帰国後の学習にも役立ちます。ただし、まだ習っていない単元や、日本語で説明する練習が必要な内容がある場合もあります。
現地の成績表や教材を参考にしながら、帰国後に必要な範囲を日本の基本問題で確認してください。受験を考えている場合は、学校の補習とは別に、入試形式も確認しましょう。
日本の教科書は手に入りますか?
条件を満たす小・中学生には、日本の教科書の無償配付制度があります。対象条件があるため、海外在住であれば誰でも受け取れるわけではありません。
これから出国する場合は海外子女教育振興財団の案内を、すでに海外に住んでいる場合は、居住地域を管轄する日本大使館・総領事館などの案内を確認してください。申請時期や受け取り方法は地域によって異なります。
追加送付では送料・手数料などがかかる場合があります。高校の教材や対象外の場合の入手方法は、学校や販売窓口に確認しましょう。
出典:海外子女教育振興財団「日本の教科書の無償配付」、「海外滞在中の方」
どの学年の教材から始めればよいですか?
帰国後の学年や受験範囲を目安にしつつ、単元ごとの学習状況から選びます。未習の内容だけでなく、習っていても理解や定着が不十分な部分を確認してください。
できる単元は先へ進み、必要な部分は前の学年に戻ります。基礎が広く不安定な場合は、前の学年の教材でまとめて復習する方法もあります。
計算はできるのに文章題が解けません
日本語の読み取りに加え、条件の整理や、数量の関係を式にする部分で困っている可能性があります。
まず何を求める問題かを説明してもらい、言葉の意味、図や表、立式の順に確認しましょう。解き方まで教えた後に解けた場合は、日本語だけが原因とは判断しないようにしてください。
帰国が何年も先でも、今から始めるべきですか?
まずは、現地で学んでいる内容と、日本で必要になりそうな内容を確認するところから始めましょう。すぐに多くの教材や授業を追加する必要はありません。
日本での受験や編入を考えている場合は、候補校の条件や科目を調べ、本人の負担に合わせて準備します。帰国時期が未定でも、入試情報の確認まで先延ばしにしないことが大切です。
まとめ|海外在住の算数・数学は、原因と単元を分けて対策する
- 日本の問題が解けなくても、すぐに算数・数学が苦手と決めつけない
- 未習・日本語の用語や問題文・理解と定着の3つを手がかりに確認する
- 現地校の成績や教材を生かし、日本で必要な範囲を別に確かめる
- 単元ごとに、習った内容・解ける内容・次に学ぶ内容を整理する
- 文章題は、日本語の理解と、条件整理・立式を分けて見る
- 模試や過去問では実施条件をそろえ、理解を確認する練習と区別する
- 帰国時期が未定でも、基礎学習と進路・入試条件の確認を並行する
最初の一歩は、現地の教材と日本の教科書の目次を見比べ、確認したい単元をひとつ選ぶことです。
基本問題に取り組み、どこで止まったか、どんな説明があると分かったかを記録してください。家庭だけで判断しにくい場合は、その答案を先生に見てもらうと、必要な支援を相談しやすくなります。
現地で身につけた力を大切にしながら、帰国や進学に必要な内容を、無理のない順序で補っていきましょう。
※教育課程や評価方法は、国・地域・学校・履修課程によって異なります。入試の必要科目や範囲は、各校の最新の募集要項で確認してください。本文の担当事例は個人が特定されないよう詳細を省略しています。3つの原因は学習を整理するための観点であり、すべてのつまずきを分類できるものではありません。
最後までお読みいただき、ありがとうございました。




